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東京高等裁判所 昭和25年(う)240号 判決

被告人

大里四郎

主文

本件抗告はこれを棄却する。

理由

前略。抗告申立人の抗告理由は、別紙即時抗告申立と、題する書面記載の通りであつて、その要旨は被告人に対する恐喝被告事件について、昭和二十五年四月十日弁護人より保釈の請求をしたのに、原裁判所は本件保釈請求は、刑事訴訟法第八十九条第三、四号の場合に該当するものと認められるから、これを却下するといふ趣旨の決定をしたが、一、被告人は本件恐喝の事実を認めている。二、仮に否認しているとしても、何等の罪証を隠滅すると疑ふに足りる相当の理由がない。三、被告人には前科なく常習として長期三年以上の懲役又は禁錮にあたる罪を犯しているものでもない。従つて原決定は失当であるから、原決定を取消し、保釈許可の決定を請求するといふにある。

よつて取寄せた被告人大里四郎外一名に対する。東京地方裁判所昭和二十五年(わ)第一、八六六号恐喝被告事件記録を調査すると、本件公訴事実は被告人は他一名と共謀の上、昭和二十五年三月二十五日夜相次いで、カフエー松住こと町田栄吉方及び飲食店営業、斎藤正一方に行つて右町田の妻及び斎藤本人に対して、それぞれ執拗に酒の提供方を要求し、俺達は刑務所を出て来たばかりだ等といつて、酒を出すか、金を出すかしなければ帰らないような勢を示して、同人等を畏怖させ、よつて右町田の妻よりは、現金、斎藤よりは配食をそれぞれ出させて喝取したというのであつて、右犯罪の種類、罪質、罪態等から考え、また記録によつてうかゞわれるように、公判の審理は未だ開始されず、従つて証拠調も終了していないと認められる本件においては、被告人が犯罪事実を認めていると否とにかゝわらず、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるものということができるから、原決定が本件保釈請求却下の他の一理由として、刑事訴訟法第八十九条第三号を掲げたことの当否にかゝわらず、原裁判所が同法条第四号の場合に該当するものと認めて、弁護人の本件保釈請求を却下したのは、結局において正当であつて本件抗告は理由がないことに帰する。

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